· 

パーマカルチャー異聞その三・四

 2008年春の豪州パーマカルチャー旅行記を旧ブログから再録しています。

 

羽天軽地亜村異聞三

ブリスベン~ユードロ

 まどろみから覚めると朝日が眼下の雲海をサーモンピンクに染めています。昨夜は本を読みながらジントニックを飲み過ぎたせいか少し気だるい感じ。成田を飛び立って約7時間、飛行機はオーストラリア東海岸に沿って南下し、定刻にブリスベン国際空港に着陸しました。

 まだ朝7時ということで閑散としている空港を後に電車でブリスベンのターミナル駅であるロマ・ストリート駅に向かいます。今日は移動日とわりきって時間に余裕があるので少しブリスベンの街を見て歩くことにして、まずは最終日に宿泊するホテルが近くにあるはずなので場所を確認しておこうと歩き出しました。しかし何処にも・・・無い?!。まあこれは看板が無かったのですが、この時はネット予約の書類を出して住所を確認するのもめんどうなのでホテル探しは切り上げ、少し街の様子を見てから駅に戻り軽食コーナーみたいなとこで列車の電光掲示を横目で見つつ早めの昼食。

 ところがネットで検索した列車が・・・無い?!。予定の発車時刻も迫ってきたので切符売場の窓口でプリントアウトした列車の時刻表を見せるのですが窓口のオジサンは「何ソレ」といった風情でらちがあかない。とりあえず乗車券を買ってプラットホームに。これはまあホームページの時刻表が更新されてなかったというのが真相で、幸い似たような列車があったのでそれに乗り込みました。本日の目的地のユードロはブリスベンから70キロほど北にあり直通列車なら約1時間30分で到着します。しかし時間帯によっては途中からバスに乗りかえる必要があり、その場合は2時間ほどかかってしまうのです。これは単線のため上り或いは下り列車の空いている方をバスで振替運行するためです。しかし、列車までネットの情報があてにならないのは困り者。こんなこともあろうかと当初はレンタカーで行くつもりで国際運転免許も申請したのですが、初めて旅行する国で運転するのも緊張しそうだし、何よりエコ・ビレッジを見に行くにしてはたった一人で車を乗り回すのはエコっぽくないかなと思い直し、急きょレンタカー案はとりやめました。今回に関しては妥当な選択だと思いますが、しかしちょっと不便なこともあったりして(この件は後に詳述します)、現地を見た限り運転に関して問題はなさそうなので、もしクリスタルウォーターズに行くことを検討している方はレンタカーをお勧めします。左通行だし初めての方でも大丈夫だと思います。無論、長期滞在の方は列車&ヒッチハイクでも全然問題ないですよ。

 列車は緑の丘陵を一路郊外に向かって走ります。乗客もまばらになってきたころユードロ駅に無事到着。手動のドアを開けて閑散としたプラットホームに降り立つと、列車が動き出し車掌さんが窓から乗り出してこちらに手を振っています。映画だとここでBGMが入るとこですね。映画パリ・テキサスでライ・クーダーがひいていたスライド・ギターなんかぴったり。

 

しばし旅の感慨にひたる余裕も出てきたところでレンタル携帯を取り出し、一応英語で応答する必要もあるかと緊張しつつ電話をかけると・・・、

「Hello!」明るいユカリさんの声が返ってきました。

 

 

 

 羽天軽地亜村異聞四

 ささやく樹

 ユードロ駅の前にある郵便局でユカリさんと待ち合わせ。この街の人たちは郵便物を郵便局まで取に来るようなので、いろんな人が入れ替り立ち替りやってきます。セレブなおばさんや、ロックガンガンのランクルから裸足で降りてくる長髪のあんちゃんとか。そうこうしているうちにユカリさん登場。ご挨拶もそこそこに、ユカリさんの車に同乗してお宅に向かいます。牧草地や瀟洒な住宅が点在する丘陵を抜け急な坂道を登りきるとユウカリの木立のなかにユカリさんのお宅が見えてきました。

 ゲストハウスに荷物を置いて庭に出ると南太平洋を見下ろすテラスにプールが水をたたえバナナの木立を写しています。これはもう南国のリゾートそのもの。横にはソーラーの電力でジャグジーが沸いていてさっそく一風呂・・・たまりませんね。

 一昨日は旅行の準備で徹夜だし昨夜の飛行機ではあまり眠れなかったりで少し仮眠しよう思ったのですがプールの下に見えたP・Cガーデンが気になってしかたない。いそいそと起き出してユカリさんにガーデンツアーをしてもらいました。

 昔はバナナ農園だったという敷地は約5ヘクタールという広大なもの。現在はユーカリなど本来の植生に復元されつつあります。母屋の下に広がる菜園は約10アールほどでしょうか、非常に手入れが行き届いています。なにより菜園に立つと気持がいい。しかし本来の土壌は乾くとカチカチの粘土質で主な作物は枕木で囲ったベットでマルチを積みながら栽培しています。このマルチの管理が大変いきとどいていて、大切に“育てて”いることが分かります。また通路などにはカバープランツとして落花生が植えられていて土壌水分の蒸発を防ぎつつ根粒菌によってチッソ固定もしてるとのこと。フルーツ類の樹も点在していてこちらはホースで点滴潅水しているようです。この菜園及び飲み水など生活用水は総て天水によるもので、幾つかの雨水タンクと貯水池に蓄えられています。夕食の材料をつみながら菜園を案内してもらうのですが、樹も草も見るもの触るもの総て食べられるものだったりハーブだったりして感心するばかり。わりと狭い菜園ですが温暖な気候もあって一家族の食料を供給する能力は充分ありそう。またこの菜園とは別に陸稲も作っているということです。水源の確保なども考えると5年という短期間でよくここまでやったものだと感嘆せずにはいられません。

 

 夜はユカリさんとオージーのご主人、そして元気な息子さんたちと賑やかに夕食をいただきました。ユカリさんは関西出身。私も関西出身ということで会ったとたんに意気投合。なんと、ご主人も関西在住が長く流暢な関西弁を話すとあって古い友人に再会したような気分でした。